明朝末期から清朝初期にかけて、客家人は相次いで台湾に渡って来た。渡来の時期がまちまちで環境も異なった他、福佬系の人々(中国大陸福建省から渡来した人たち。閩南語を話す)の間でいさかいが絶えなかったため、客家の人たちはそれを避けるため台湾本島の中でも数度の移動をした。また、客家の人々の勢力は相対的に弱かったため福佬系の人々に同化された者もあり、最終的には、客家人が集中する地域は台湾北部、中部、南部の3ヶ所に分かれることとなった。花東縦谷にも一部分散して暮らしている。
現在、客家人が集中して住むのは、北部は桃園県、新竹県、苗栗県が主、南部は高雄市、屏東県六堆地域が主となる。中部は台中市、南投県、彰化県、雲林県。また、東部の宜蘭県、花蓮県、台東県の一部の地方にも集落が存在する。
客家人は台湾に渡来した時期が遅く、人数も少なかった。丘陵地帯に住んだのは、人数の多い福佬系の人々との摩擦を恐れたためであり、また、先住民族の攻撃を防ぐためだったが、この環境において客家人は、病気や大自然と懸命に戦わなければ生きていけなかった。このため台湾における客家人には、苦労に耐え、困難を恐れず環境の改善に取り組み、人と環境の良好な関係を築くという特性が培われた。
また、客家人は中国大陸における数千年の歴史においても移民を繰り返してきたエスニックグループであり、常に苦しい環境で生活する中で、現状を打開するのに最良の方法は勉強をし、功名で人の上に立つことだと考えていた。客家人は、文化と知識を生き抜くための主な手段とみなし、教育面での実績で社会的、そして経済的な地位を改善しようとしてきた。
2004年に行われた調査によると、「自らを客家人と認識する」客家人は285万9000人。「二つ以上の身分を認められる場合に、自らを客家人と認識する」客家人は441万2000人。「自らを客家人と認識する」客家人、もしくは「台湾の客家人の血を引くと認識する」客家人は合わせて608万4000人だった。
しかし、1994年の学術研究は、台湾における客家語は毎年5%の割合で失われていると指摘する。行政院客家委員会が2002年に行った調査でも、客家人のうち、13歳以下で客家語を流暢に話せるのは11.6%にすぎず、2003年の時点で、客家語を話せる、もしくは理解できる人は約43.6%だった。このため政府は、客家語の復活に向けて様々な計画を推進している。
台湾における客家語には地方によっていくつかの違いがある。以下、その違いと分布を紹介する。
台湾には主に5種類の客家語が存在する。まず、中国大陸広東省嘉応州からのもので、6種類のアクセントを持ち、最も多くの客家人が話す「四県腔」。広東省海豊と陸豊からのもので、アクセントは7種類、台湾で二番目に多い「海陸腔」。広東省潮州からの「大埔腔」。広東省饒平からの「饒平腔」。中国大陸福建省漳州からで、原始的な発音と意味を最も多く残す「詔安腔」。これら多様な客家語が台湾全土に分布している。また、この5種類の他、北部の「四海語」、「永定」、「豊順」、「武平」、「五華」、「掲西」なども存在する。
• 四県腔
桃園県:中壢、龍潭、平鎮、楊梅。
新竹県:関西の一部。
苗栗県:苗栗市、公館、頭份、大湖、銅鑼、三義、西湖、南庄、頭屋、卓蘭(大部分)。
台東県:池上、関山、鹿野、成功、太麻、卑南。
屏東県:竹田、萬巒、内埔、長治、麟洛、新埤、佳冬、高樹。
高雄市:美濃、杉林、六亀。
• 海陸腔
桃園県:観音、新屋、楊梅。
新竹県:新豊、新埔、湖口、芎林、横山、関西の一部、北埔、宝山、峨眉、竹東。
花蓮県:吉安、寿豊、光復、玉里、瑞穂、鳳林。
• 大埔腔
苗栗県:卓蘭(中街、内湾、水尾)。
台中市:東勢、石岡、新社、和平。
• 饒平腔
桃園県:中壢(芝芭里、興南庄、三座屋、過嶺里)、平鎮(南勢庄)、新屋(犁頭洲)、観音(新坡村)、八徳(宵裡)。
新竹県:竹北(六家)、芎林(上山)。
苗栗県:卓蘭(老庄)
• 詔安腔
雲林県:崙背、二崙、西螺。